長崎県平戸市生月町博物館「島の館」

生月学講座 No.074「家庭の盆」

 生月島ではお盆は元は旧暦7月でした。在部(農村)が先に新暦8月に移り、浦部(漁村)では旋網船団の白月入港の関係で平成2年になって新暦に移行したそうです。

 各家庭では8月に入ると墓掃除をして石塔を磨き立て、10日を過ぎると花筒を取り替え花を飾ります。

 13日は精霊迎え。精霊棚を座敷に飾り、仏壇から位牌を移します。精霊棚は四隅に女竹を立て、正面両脇にソーハギという草を飾ります。棚の上には精霊菰を敷き、最上段に位牌を、下の段に供物を供えます。初盆の家は13日には灯籠(盆提灯)を灯します。13日の昼にはオテッキダンゴ(迎え団子)を供えますが、舘浦では米粉をこねて蒸しべったりさせたものに餡をまぶしたものです。料理を供える時には、餓鬼精霊様(ガキジョウロサマ)の供物を先祖様より前に供えます。餓鬼精霊様の供物は一つの小皿にごったに盛ったもので、箸も付けず、早く供えないと先祖様の分がおっ取られる(盗まれる)のだそうです。他に留守番様(仏壇)やお大師様の棚にも供えます。夕方のお膳は、麻殻箸を御飯に立て、椎茸出汁のお汁などを供えます。夜にはカド(玄関前)に灯籠を灯します(15日の晩迄)。

 14日の朝には精霊棚にお膳を供え、昼には混ぜ御飯のお膳を、おやつにはフナヤキ(小麦粉を焼き餡を包み込んだ菓子)を、夕方はお膳を、晩にはぜんざいを供えます。

 14・15日には墓参りに行きます。その際には南瓜の細かく切ったものと米・小豆などを混ぜた水の子というものを、自家や親戚等の墓に供えます。また14・15日の晩には各家で墓に灯籠を灯しますが、灯籠の蝋燭を交換しながら3本燃え尽きる間は墓に居るしきたりだそうです。灯籠は昔は贈られただけ沢山灯していましたが、今では初盆の家は14~16個、それ以外は10個迄と制限されています。夜のお墓で帰省者も含め家族が酒盛りや花火をして過ごしますが、墓地全体で花火が輝き、ロケット花火が飛び交う様子は戦争のような騒々しさです。

 15日の朝は精霊棚にお膳を、昼には小豆御飯のお膳を供えますが、その時にはソーハギの枝で作った箸を立てます。おやつには蜜豆、夕方にはお膳を供え、午後7時頃にはゆがいた素麺を椎茸出汁の汁を添えて供えます。夜9時頃には送り団子というカシワの葉で包んだ茹で団子と、寒天を皿に張ったカガミというものを供えます。

 午後11時頃になると送り支度を始め、まず位牌・花・果物を仏壇に戻します。次に精霊菰を広げて送り団子・カガミ・野菜果物・箸・竹・ソーハギなどを入れて巻き、両端を結んでツトにし、それを持ち出して送ります。精霊ツトは昔は浦では海に流し、在では家の近所の畑の石垣に置いてきましたが、現在では海辺に近い場所にある置き場まで運んでいます。また初盆の家では戦後頃から板で作った精霊船を作るようになり、以前は海に流していましたが、今はこれも少し海につけてから置き場に運びます。壱部浦では精霊船を担いだ家族が置き場に集まり、僧侶の読経に合わせて皆でお経を唱えます。こうして精霊様は旅立たれていきます。

H21.09.11

 




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