長崎県平戸市生月町博物館「島の館」

生月学講座No.169 河童は神か妖怪か(その1)

 信仰面ではかくれキリシタンが有名な生月島ですが、河童にまつわる信仰や伝説も豊富に残っていて、今もその実在を信じている人も少なくありません。河童は「ガッパ」「ガワッパ」「ヒヨヒヨドン」などと呼ばれ、小さな子供のような姿をしているそうです。また河童は「ヒヨヒヨ」とか「グドグド」という鳴き声を出すそうです。
 河童に会った人の話では、河童が現れる時には視界が急に白くなり、小さな子供が現れて、「相撲をしようや」と言ってきたそうです。それで一々断るのもせからしい(面倒くさい)のでほたる(放り投げる)と、子供がどんどん増え、次々と取らねばならなくなり、気が付いた時には泥だらけになっていたそうです。
 河童は、人が何か食べるものを持って歩いていると、それを狙うようで、宴会帰りの人がお裾分けの御馳走を持って歩いていたりするとよく出るそうです。お祝いの宴席で出た御馳走を、宴の後、その家の子供が客の家に届けるお使いを言われる事がありましたが、その時には、「早うに(暗くならないうちに)もっていけ、暗くなるとガッパがそぼく(引っ張る)から」と言われたそうです。また河童はヒノクレマグレ(夕暮れ時)によく現れるので、その時分には河童がいる池の近くには行くなと言われていました。また雨が降る夜にもよく現れると言われます。
 河童がよく出現する場所というのもあり、そうした場所は、神様が祀ってあったり、かくれキリシタンの「野立ち」(野祓い)の行事の際、オマブリ(お守り)をおす(納める)場所になっている場合が多くあります。壱部の牛神様の場所付近もそうした場所で、急に白い霧のようなものが出てきたので、河童が出るか知れないと引き返した事もあるそうです。また河童は溜池に住んでいるといい、大正時代に造られた大型の池の中には、よく上部が平らな「ガッパ石」と呼ばれる大石が置いてありますが、池を築造する際に河童ののぼり石(休み場)にするため、わざと大石を残したものだといいます。
 河童が行き来する道というのもあり、堺目にある加場田池という小さな溜池には河童が住んでいると言われていましたが、日照りが続いて池の水が少なくなると、河童がこの池から海に向かって下る小川(溝)を伝って海に避難し、雨が降ると逆方向に上って池に帰るといいます。この小川沿いの家々では、雨が降る日にはよく外から「グドグド」という声がしますが、声を気にして窓を開けては駄目だと言われています。
 この小川の途中にはガッパ石という大石がありますが、壱部の馬場にも四つ辻に面した場所にある平石がガワッパ石とされ、道沿いの擁壁が整備された際にもそこだけ元のまま残されています。この石に大人が腰掛ける事はできませんが、子供は構わないと言われています。この石がある四つ辻の道も流れ下る小川に沿っている事から、河童の通り道になっていると考えられています。ガッパ石はかつては上場の野原の中にもありましたが、元触の松本にある河口にも大きな平石のガッパ石があり、旧暦9月15日には、近くの祠に祀られている川の神様「フタガワ様」の祭りに併せて、ガッパ石の上に米・塩・御神酒を供えて、神主が祭事を取りおこないます。行事の世話は、かつてガッパ石の脇に納屋場があって、沖合が漁場となっている松本定置網の関係者が行っています。

2017.8

 




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