長崎県平戸市生月町博物館「島の館」

生月学講座No.205「塩俵の由来」

生月学講座 塩俵の由来

  6月の始め、生月中学校1年生の地域学習の中で生月島塩俵の柱状節理についてレクチャーしたのですが、少し後に放映されたNHKの「ジオジャパン」という全国放送の番組の中で、ちょうど塩俵の事が紹介されました。その中で塩俵の柱状節理は、今から300万年前にマントル層から直接噴出するポットスポット型の大噴火が起きた証拠だと説明されていて、驚いた次第です。
 日本列島には多くの火山がありますが、時折噴火して溶岩や火砕流を噴出させ、災害に繋がる事もあります。火山が多い理由は、日本列島の場所で、地殻とその下のマントル層上部で構成された巨大な板状の岩盤「プレート」が移動し衝突しているからですが、プレートが移動しているのは、その下のマントル層がさらにその下にある核の熱で流動化して対流を起こしているからです。日本列島では北から張り出したユーラシアプレートと、東から伸びる太平洋プレート、南から伸びるフィリピン海プレートが衝突し、後の二枚のプレートはユーラシアプレートの下に潜り込んでいます。その時、マントル内部に引き込まれた地殻と海水が反応・高熱流動化してマグマとなって噴出するので火山が多いのです。
 マグマには様々な物質が溶け込んでいますが、地上に噴出する迄の間に多くの物質が周囲の地殻に溶け出しています。マグマは元々、物質が多く溶け込んだ状態なので比較的粘性が小さいのですが、物質が溶け出ていくと、残りのマグマはガラスの元でもあるSi(ケイ素)の割合が増えていき、粘性を増していきます。まだ多くの物質が溶けたままのマグマが噴火すると溶岩は川のように流れ、なだらかな山が形成されます。その溶岩が固まったのが玄武岩で、生月島の山頭や度島、北松浦半島、伊万里湾の鷹島などはこの岩で出来ていますが、鷹島の石は阿翁石と呼ばれて昔は墓石などに利用されています。玄武岩よりやや粘性が高い溶岩で出来るのが安山岩で、平戸の安満岳などのように、やや急峻な山になります。さらに粘性が高い溶岩でできる石が流紋岩で、噴火すると上に盛り上がって溶岩ドームを作りますが、ドームが自重や地表に達した溶岩の急な発泡などで崩落すると、高温の熱風と粉塵が高速で流れ下る火砕流を発生させます。雲仙普賢岳の噴火はこのスタイルで、火砕流が堆積すると凝灰岩という岩になります。
 玄武岩質溶岩の噴火は、ハワイのように洋上の島の火山で多く見られますが、海は地殻が薄いため、物質があまり抜けないうちに噴火するからだと言われます。一方、厚い地殻を抜ける陸地の噴火では安山岩質や流紋岩質の噴出が多いとされます。生月島の場所は、新生代新第三紀中新世中期初頭(約1500万年前)頃には中国方面の大河が吐き出した土砂が堆積した浅い海底で、平戸層群という礫、砂、泥、火山灰からなる堆積岩が形成されていますが、800~300万年前に大規模な噴火が起き、粘性が少ない溶岩が噴出して玄武岩層が形成されました。噴火は何度も繰り返された事が、大バエや鷹の巣断崖に見られる縞状の堆積状況から分かるのですが、一度に大量の溶岩が噴出する大噴火が起き、溜まった溶岩が地表側からゆっくり冷えていき、表面に出来たひび割れが冷えるにつれて段々奥に伸びていって柱状に割れたものが、塩俵のような「柱状節理」なのです。




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