長崎県平戸市生月町博物館「島の館」

生月学講座No.208「B&Gが取り組んだ平戸市の海洋スポーツ普及事業」

生月学講座 B&Gが取り組んだ平戸市の海洋スポーツ普及事業

 生月町の上場に体育館とテント型屋内プールを持つB&G(ブルーシー&グリーンランド)財団の海洋センター(B&G)が竣工したのは昭和60年(1985)の事です。(旧)生月町は教育に力を注いでいて、社会教育の拠点施設として中央公民館が昭和46年(1971)に建設され、昭和60年(1985)には500人収容のホールを持つ開発総合センターが、平成7年(1995)には展示面積1300平方㍍の博物館・島の館が建設されていますが、人口1万人(当時)規模の町でこれ程社会教育施設が充実した町はなかなかないと思います。
 B&Gには海洋スポーツと水泳の育成士が勤務し、生月町の社会体育の拠点として様々な自主事業を行う一方、小中学生のクラブ活動の場としても重要な役割を果たしました。特に特徴的な活動は海洋スポーツ普及活動で、夏期には小中学生を対象としたB&G海洋クラブの一人乗りカヌー、5人乗りのローボート、初心者用一人乗りヨット(OP艇)の練習を舘浦港内で行い、時津や小佐々、加津佐で開催されるB&Gスポーツ大会に出場していました。
 市町村合併後の平成19年(2011)頃からB&Gで積極的に取り組んだのは、平戸市内各地での児童生徒対象の出前カヌー教室です。地域はほぼ市内全域に及び、申し込み団体は公民館、小中学校、子供会、PTAなど様々でしたが、子供達にはカヌーなどの体験とともに、地元の海に親しんで貰えればという気持ちがありました。最近は海岸にテトラポットや防潮堤などが整備された事もあって、子供達が海と隔てられてしまっている印象があり、こんなに豊かで美しい海に囲まれた平戸市の子供達が海に背を向けて成長するのは、将来海に関心を持たない大人を増やす事になり、それが海の環境や漁業などへの無関心に繋がり、海の危険にも対応できない事にもなるという危機感がありました。
 出張カヌー教室は毎年7月から9月までの間、十数回開催されましたが、新たに導入した2人乗りのオープンカヌーが、安定性もよくて大活躍しました。事業の際には育成士と5名程度のサポーターが出向き、指導の他、機材の準備や監視などにあたりました。的山大島の大根坂、田平の一六、生月島の舘浦港、トボス海岸、平戸島北部の油水、荒崎、千里ケ浜、中部の人津久、根獅子、南部の西浜、福良などを会場に使いましたが、特に事業向きだったのは福良で、海岸が階段状で艇の上げ下ろしが容易で、奥行きがある入江のため安全にカヌー体験が楽しめました。また特に美しいと思ったのは大島の大根坂海水浴場で、砂浜なので艇の上げ下ろしは難儀でしたが、青い海と空が広がり、沖におあつらえ向きの小島があるなど、リゾートのような環境の中で事業ができました。荒崎ではカヌー体験が一段落すると、サポーターがきちんと管理をする中で堤防から飛び込む体験などもしました。安全には常に気をつけ、参加者は必ずライフジャケットを着用し、バディを組ませて相互に安全を確認する他、陸上監視とともに船外機付きゴムボートやカヌーで海上監視を行いました。そのため14年の間事故は一度も起きませんでした。
  B&Gは今年(令和2年)11月から指定管理施設に移行するので、社会教育直営事業としての出張カヌー教室は今年の夏で最後となりました。これまで体験した子供達がいつの日か、平戸の海を楽しく思い出してくれたら嬉しい限りです。




長崎県平戸市生月町博物館「島の館」

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