生月学講座 No.028「舘浦須古踊り」
- 2019/12/17 17:51
- カテゴリー:生月学講座
毎年8月、暑い日差しの中、舘浦で恒例の盆踊り(須古踊り)が行われている。横笛、太鼓、鉦からなる囃子方の道囃子に合わせ、吹貫、幟、花笠、徒士組、鉄砲組と笠鉾からなる行列が練り歩き、毛槍、挟箱、杖と中踊り(須古踊り)が披露されました。盆の時期、舘浦に限らず平戸地方の各地で特徴ある盆踊り行事が行われています。
隣りの度島では、旧暦7月16日頃(近年は白月に合わせている)に「盆ごうれい」が行われています。浦、中部、三免(飯盛)の3地区にそれぞれ組があり、全長10㍍に達する大きな幟を各々2本持つのが一番の特徴です。奉納場所では、まず幟を起こして建物に立てかけますが、竿の尻を地面に付けないように起こすのに力と技術が要求され、青年会の会員でも起こせる人は限られています。その分、幟を立てかけて貰うのは栄誉な事とされていました。その後、子供の花杖、木刀や鎖鎌などを使った武術の型を行う流儀、須古踊り、奴踊り(浦)、女子児童による子踊り(中部、三免)が披露されます。回るのは寺社、祠堂の他、古墓や行事に貢献する個人の家などです。
的山大島では、8月13~15日にかけて盆踊りが行われます。的山地区では流儀、花杖、須古踊りが、神浦地区では東西1年交替で同様の構成で、在部では前平の流儀、西宇戸の須古踊り(現在は廃止)、大根坂のジャンガラが合同で一組をなし、15日には役場前で一斉公開されています。寺社、祠堂などの他、初盆の家やお墓を回るのが特徴です。
平戸島では8月に入って野子、大志々伎(14日)、津吉、中津良、根獅子、紐差、宝亀(15日)、中野(16日)、平戸(18日)でジャンガラが行われます。幟を先頭に行列を組み、寺社やお願いされた一般の家に中踊りを奉納して回ります。中踊りの踊り手は、頂部に花飾りをつけた花笠を被り、腰の前に太鼓を付けていますが、これを叩くことはありません。なお野子、大志々伎には杖の組が附いて一緒に披露します。
なお平戸の獅子にも須古踊りは伝わっていますが、本来は雨乞いで不定期に行われてきており、近年は8月16日の夕方に行われる獅子小同窓会の時に披露されています。行列に槍と挟箱がいて、杖と中踊り(須古踊り)の演技があるなど舘浦と似た構成ですが、他に、万才のような面白い台詞で笑わせる枠ふりという演技があるのが特徴です。
各地の盆行事を比べてみると、行列を組んで各所を回り、寺社などに踊りや演技を奉納するという基本は共通しています。幟も共通して見られますが、度島では幟が、さながら神霊の依代のような神聖な扱いをされているのが注目されます。またジャンガラの中踊りの装束は、舘浦の行列の花笠に影響を与えたのかも知れません。舘浦に見られる傘鉾は、おくんちではよく見かけますが、盆行事では他に例がありません。花杖は多くの地区で認められますが、度島、大島などでは流儀という青年の武術の演技が加わります。須古踊りについては、踊る目的は様々(屋祓い、初盆供養、雨乞い)ですが、傘を被り扇子を持って輪を描いて踊るという基本形は共通しているようです。ただ、舘浦の須古踊りに加わっている、笹竹を背負って口上を述べるアビャゴについては、他に例がありません。