長崎県平戸市生月町博物館「島の館」

生月学講座 :テントブネの建造

生月学講座:テントブネの建造


 サッカーのワールドカップも終わり寂しくなりましたが、一方で生月の海のワールドカップ(相当無理なこじつけですが)舘浦競漕船大会の開催日、7月28日が近づいてきました。既に練習に取り組んでいるチームもあり、次第に盛り上がってきています。一般、部落対抗、船団対抗、女子など、今年はどこのチームが優勝するでしょうか。今回は、競漕船に使われているテントブネが建造された時の事を紹介します。
 テントブネは木で出来た長さ12㍍程の船で、昔の生月島で、アゴ網、シイラ網、建網、海士漁などの他、農家の海藻取りや運搬にも使われた、一般的な船でした。櫓をこいで進む他、帆柱を立てて帆走することもできましたが、後ろや横から風を受ける時に限られました。
 舘浦漁協では3艘のテントブネを復元建造することを計画し、県や町からも補助金を得て、平成6年度に建造を行いました。実際の建造は平戸市前津吉の造船所で、片山さんと崎本さんという老練な船大工さん達が作業を行いました。
 テントブネを含め、日本の伝統的な方法で建造された木造船を「和船」といいます。例えば欧米の木造船を建造する場合は、動物の骨格を想像して貰うと分かりやすいのですが、最初に背骨にあたるキールという柱を船底の前後方向に据え、それに直角に、肋骨にあたる曲がった柱を取り付けて、いわば提灯に紙を張る要領で、柱で船の形を作った上に外板を張っていきます。一方和船では、最初に航と呼ばれる船底の厚板を据え、その両側面にカジキ、上棚という外板を曲げながら取り付けていき、航の上に付けたセコ・貫と呼ばれる隔壁材に両側の外板を固定します。いわばカブトムシのように外板で形を保たせるわけです。
 テントブネの建造は、平成6年秋から始まりました。まず、二枚の板を横に接合して広い航板を作り、それに船底のカーブを付けるため焼き曲げを行った後、小屋の中にある船台に航を据え付けると航据えの儀式を行います。その後、水押と呼ばれる船首の柱と、トモトダテと呼ばれる船尾の板材、セコを取り付けます。そして外板であるカジキ、上棚を取り付けていきますが、これらを付ける際は、板をつっぱり棒で押しつけている間に、船釘で航や他の材に打ち付けていきます。なお外板の間は水が漏らないように、事前に擦り合わせ鋸という特別な鋸で隙間に沿って引いて接合面を毛羽立たせてから船釘で接合していきます。外板の一番上にはコブチという縁材をつけます。
 最後に、舵床という舵を取り付ける材や、船梁という櫓杭を付ける横柱、スイタという取り外しのきく甲板を取り付けて完成すると、最後に船大工さんが、船霊様という船を守る女神様の御神体を埋め込んで、船下ろしという進水の儀式を行いました。
図1:西洋と日本の木造船の断面比較  写真2:航板の焼き曲げ
写真3:上棚板の取り付け  写真4:鋸擦り作業  写真5:仕上げ中のテントブネ
(『広報いきつき』2002年7月号掲載 中園成生)




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